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第六話「はじめての親友」

ハイランダーらしく屈強な体格のレオンだったが、肺を犯す病魔の進行は止められなかった。

 

ウルダハは夏の酷暑が広く知られているが、冬にも厳しい寒さに見舞われることがある。

レオンは特に寒さの厳しい冬に体調を崩し、そのままどんどん弱っていって、粉雪がちらつく朝、静かに息を引き取った。

 

人づてに聞いたのか、 レオンが亡くなってすぐ、友人と名乗る男が現れた。レオンは自分の死を予感していたのか、俺たちの今後の生活について親友に相談していたようだ。

たくましい体つきの浅黒い肌のハイランダーで、レオンとどことなく似た雰囲気がある。やはりアラミゴ出身で、フリートヴァルトと名乗った。のちに俺が親方と呼ぶようになる人物だ。

ドリスはもともと彼と馴染みだったらしく、ふたりはしばらく抱き合ってレオンの死を悼んだ。

 

俺とドリスだけでは困り果てていただろうが、彼の手配で簡単な葬儀を行うことができた。養父の亡骸はウルダハを見下ろす丘のうえの墓地に葬られた。

墓の前でドリスはずっと涙をこぼしていたが、しばらくすると落ち着きを取り戻し、肩を支えている俺にポツリと言った。

 

「レオンとのお別れは覚悟していたわ。それに、私にはあなたもいるから大丈夫」

 

俺は黙って頷き、ドリスの手をぎゅっと握った。

 

「ミコッテの子を引き取るって聞いたときはたまげたもんだが、いい家族になれたようで良かったなぁ。レオンも満足そうな顔をしてた。ドリスのことをずっと気にしてたから、坊主がいてくれて心配もなくなったんだろうよ」

 

そう言って、俺の頭を優しく叩く。よくレオンも同じことをしてくれた。

レオンと一緒に歩いた日々を思い出して、胸の奥が少し痛んだ。

 

「だが、じきにレオンの蓄えも尽きるだろう。それにドリスは心臓が悪いから、薬をずっと飲み続けなきゃならん。俺はパールレーンの近くで荷運び場をやっているから、仕事が欲しくなったらそこへ来るといい」

「ありがとう。そうします」

ドリスとふたりで生活するようになって、イヤというほどお金の心配をするようになってしまった。

はじめのうちは良かった。レオンが残してくれた財産があり、仕事をしなくても暮らしていけた。

 

けれども戦火がウルダハに迫ってくると、徐々に物価があがってきた。

食料だけならなんとかなる。外で狩りをすればいいし、獲物を畑の作物と交換してもらえる。

けれども冬の燃料費、家賃、ドリスの薬代が家計を圧迫した。

 

とうとう住み慣れた家を売り払い、小さな家に引っ越すことにした。

もともと住んでいた家はドリスの両親のもので、中産階級らしくそれなりに部屋数もあったのだが、移り住んだ家は下層民のための集合住宅で、玄関と小さな居間、それから寝室しかない。

ドリスの身体が心配なので、寝室には彼女のベッドを運び込み、俺は居間の暖炉の前に厚めの毛布を敷いて、そこで眠ることにした。

 

チラチラと燃える暖炉の炎を見つめながら考えた。

蓄えが尽きるまえに仕事をはじめて、なんとか生活費を稼がないと。

俺はともかく、ドリスの薬は手にいれないといけないし、栄養のあるものを食べさせたい。

ドリスを守るってレオンと約束したから。

 

母の消息を探しにドライボーンへ行くという目標はとっくに諦めていた。

一日一日を生き抜いていくだけで精一杯だ。

 

翌朝、フリートヴァルトを探してパールレーンに行ってみると、行き止まりの路地裏ですぐに彼の姿を見つけることができた。

大きな身体を窮屈そうに椅子に押し込んで、背中をまるめてせっせと帳面になにか記入している。

机の上には紙切れや分厚い本が山積みになっていて、いまにも崩れてしまいそうだ。

そのまわりで様々な大きさの荷物を運んで働いているのはみな身体の大きな男たちばかりで、そこへ頭ひとつ以上小さい俺が入っていったものだから、まるで見世物のようにジロジロと見られた。

 

「おい小僧、おまえミコッテ族か?」

 

いきなり尻尾を引っ張られて、俺はつんのめった。

おもしろ半分に尻尾を引っ張るやつがたまにいるが、尻尾だって骨があるし血も通っている。引っ張られると痛いし、ひどくすると脱臼することだってあるから、尻尾を引っ張られるのは不愉快だ。

振り返ると、上半身裸で汗だくの大男がイヤな笑い方をしながら俺の尻尾を掴んでいた。

 

「痛いじゃないか! なにするんだ!」と、怒りの声をあげると、肩をすくめてみせ、

「このへんじゃ珍しくてな。親方に用事か?」

 

声を聞きつけてフリートヴァルトが帳面から顔をあげる。

俺を見つけると、にいっと人好きのする笑顔をみせた。

 

「ムサシじゃねぇか。いつくるのかと思ってたんだぞ」

 

手招きされたので大男を振りほどき、机の近くまで歩いていくと、フリートヴァルトは椅子から億劫そうに立ち上がった。熊のような吠え声を発しながら腕をぐるぐるまわしたり、肩や腰を揉んでほぐす。

いちいち身振りが大きいし、とにかく大声なので驚いてしまうのだが、レオンもわりとそんな風だったし、もしかしてハイランダーはみんなこんな感じなのかな…。

 

「ああ、俺ァちまちま帳面をつけるのなんか大嫌いなんだよ! 肩がこってしょうがねぇや」

 

机の上の帳面を平手で叩く。

まったく掃除をしていないのか、ぶわっとホコリが舞い上がった。

 

「ムサシ、おまえドリスから読み書きくらいは習ってるだろ? 計算はできるか?」

「数字を足したり引いたりすること?」

「そうだ。ここの人夫はみんな日雇いだからな。出来高で給金を支払って、それを帳面につけなきゃならん。俺が一番キライな仕事だ」

 

にんぷ…ひやとい…できだか…? 聞いたことがない言葉がポンポンと飛び出してくるが、とにかくなにかを計算して、それを帳面に記入するということか。わかっているのか自分でも自信がないが、こくこくと頷くしかない。

帰ったらドリスに聞いておかないと。必死になって今聞いた言葉を頭に詰め込んだ。

 

「親方、ミコッテの頭が良いなんて聞いたことないぜ? そんなチビに務まんのか?」

「最初から全部任すわけないだろう。ママルカに補佐させる」

「チビとチビか、そりゃあいい」

 

なにが面白いのか、大男がゲラゲラ笑って荷運びの仕事に戻った。

いままで気づかなかったのだが、机の影からヒョイと小さなララフェルが出てきた。小脇に重そうな本を抱えている。

ヒューランの子どもにしか見えないが、ウルダハでは珍しくもないデューンフォーク族だ。

頭が良く商売にたけ、ウルダハで成功した者も多いらしい。

彼は褐色の肌にキラキラ光る金色の目、黒髪を頭上で無造作に束ねている。ララフェルの年齢はよくわからなかった。

 

「や、親方から話は聞いてる。おれはママルカ・ノノルカ」

「俺はムサシ」

 

ママルカが差し出した手を握り返すと、こちらに顔を近づけてきて目配せした。

 

「あのイヤな奴はブルって呼ばれてる。意地悪で猛牛みたいなうすら馬鹿だから気をつけな」

 

先ほど俺の尻尾を引っ張り、茶化してきた大男のことのようだ。

意地悪で猛牛みたいな…ウスラ馬鹿? 独創的な表現すぎてよくわからなかった。

 

「うすら? …ウズラ?」

「ウズラだったら卵も産むし、少なくともあいつよりは役立つんだがなぁ。よいしょっと」

 

背伸びして重そうな本を机の上に乗せようとしていたので、あわてて手を出して手伝う。

ちらりと中身が見えたが、見知らぬ単語がびっしりと並んだ難しそうな本だった。

 

「なにかっつうとチビチビってうるせぇんだよ。てめぇはでっかい図体だけの癖してよ」

 

口を尖らせながら言うが、別段怒っている風でもなく、むしろママルカの言動がいちいち面白いのでつい笑ってしまった。

 

「だいたいチビとしか言えないのは語彙が少ないからだ。まともに読み書きができるようになってから人をけなせよな。まったく、頭の中に何が詰まってるんだ。筋肉か? 脳みそじゃなさそうだしな。」

「かもしれない」

 

ふたりで顔を見合わせて、ぷっと吹き出し、それから大笑いした。

はじめて俺の親友になったのは、小さな身体に知恵とユーモアが詰まったララフェルだった。

日々わからないこととの格闘だったが、それでもなんとか荷運び場の仕事をまわせるようになってきた。

 

俺が担当しているのは、日雇い人夫たちの出来高を確認し、帳面につけて、その日の給金を支払うこと。大きい荷物はまだ運べないので、届いた荷物の仕分けと、主に王政庁宛の手紙を届けに行ったりもした。

一緒に働いているママルカは、人夫の仕事割当と、荷物を受け取りにきた人の対応と、苦情処理だ。荷物の中身が違っていたとか、ぶっ壊れていたとか、そういった苦情を言ってくる人がときおりやってくるのだが、それらを口先で丸め込むのが彼は上手かった。

さきほど、荷の中の装飾品が破損していたとかで客がやってきて、その対応を今まさにしている。

 

「えっ? 中身が壊れておりました? そうですねぇ、これは繊細なもののようですから、それなりの梱包をしていませんと破損してしまいますね…ええ、大変申し訳ないのですが、うちで荷の中身まで確認することはいたしません。どこの誰ともわからない日雇い人夫に中身を確認させたくはないでしょう? 盗難でもされたらそれこそ一大事ですしね。もちろん、お困りなのは存じあげておりますよ」

 

ここまで一気にまくしたてて、それから急にはたと手を打つ。

 

「そうそう! 腕の良い彫金師を紹介できます。もちろん破損がわからないほどに修復できますし、料金も破格ですよ?」

 

まるでなにか思いついたかのように話しているが、実はその彫金師はうちの息がかかっていて、こういった客を紹介すると売上の一部がこちらにも入る。だからといって荷をわざと壊したりはしないが、荷運びはかなり荒っぽいので、繊細な装飾品はたびたび破損してしまうのだ。

ママルカはさらにあれやこれやと適当なことを吹聴し、ついには修理料金三割増しで磨き上げまでさせることを約束してしまった。

あれだけペラペラと言葉が出てくるのは本当にうらやましい。いや、別に出来なくてもいいか…。

 

呆れ顔をして見ていたのがわかったのだろう。ニヤリと笑うと、こちらに親指をぐいを立ててみせてきた。

俺たちの間のサインで「我、絶好のカモを得たり(もしくは単純に「やったぜ!」)」という意味だ。

 

「おい、チビ助。あんまり俺を待たせるなよ」

 

そうだ。いまはブルの給金を計算していたんだった…。

苦情処理のほうが気になってしまって、つい手が止まっていた。

 

正直いって、ブルはママルカのいうとおり、あまり頭がよろしくない。

効率というものを考えないから、とにかく重い荷物ばかり運びたがる。

重い荷物を運ぶのはそれなりの料金にはなるが、一度に複数運べないし、運搬に時間がかかるので、あまりいい稼ぎにならないのだ。

計算が終わったので帳面に記入し、引き出しの中から紙幣と数ギルを取り出すと、ブルにそれを渡した。

 

「これだけかよ! こんなんじゃ女も買えやしねぇ! おまえ、計算間違ってるんじゃないだろうな?」

 

凄んで、机越しに俺を睨みつけてくる。

こいつは嫌いだ。いつも威張りくさってるし、意地悪だし、すぐに俺の尻尾を引っ張る。

そのうえ手下をふたり引き連れてるし、なんだかダイラーを思い出す。

 

「疑うなら自分で計算してみればいいじゃないか」

 

帳面を開いたままドサリとブルの前に放り出すと、やつはぐっと言葉に詰まった。

こいつが読み書きも計算もできないことは知ってる。俺なりの仕返しだ。

怒りに震えるブルの背後で、人差し指を角の形にして頭の上に突き出し、おどけて牛の真似をしているママルカが目に入った。

こんなときにやめてくれないかな。吹き出してしまいそうだ。

 

「畜生、おまえ、覚えてろよ!」

「残念。チビだからすぐに忘れるよ」

 

ママルカとの付き合いのおかげで、俺も嫌味が言えるようになってきた。

ブルが帳面に目もくれないので(読めないのだから当たり前だ)、手を伸ばして引き寄せ、それからパタリと閉じた。

帳面を引き出しにしまい、鍵をかけて、チュニックのポケットにしまい込む。

親方が俺を信頼して預けてくれたものだ。これだけは絶対に無くすわけにはいかない。

 

「ムサシ! 王政庁に届け物があるみたいだぞ」

「わかった。今行く」

 

ブルがしつこく机の前から動こうとしないので、ママルカが助け舟を出してくれた。

身軽に机を飛び越えて、ママルカのそばに走り寄る。それからふたりして笑いを噛み殺しながらそこを離れた。

 

「ああ、あいつ本当に馬鹿だ。からかうと面白いよな。今度いちゃもんつけてきたらおれが相手してやるから、すぐに呼んでくれよ」

「なんで読み書きを勉強しようとしないんだろう? 悔しければ勉強すればいいじゃないか」

「あいつクソ馬鹿だから勉強しようってことすら思いつかないんだよ。それが馬鹿が馬鹿たる所以ってもんだ」

 

ママルカは物知りで頭がいい。そのうえ口が悪くて冗談ばかり言っている。

はじめはなにが本気でなにが冗談なのか区別がつかなかったのだが、付き合っているうちに、基本的にすべての物事を茶化すのが好きなのだということがわかった。

ドリスが知ったら卒倒してしまいそうだったが、悪い言葉は彼からたくさん習った。

 

たとえば、ママルカお気に入りの「クソ」について。

クソ、すなわち排泄物のことだが、これをちょっとくっつけてやるだけで、途端に悪い言葉が出来上がるのだ。

クソ面白い、クソむかつく、あいつクソみたいな顔してる、などなど、応用範囲は広い。

この法則に気付いたときは世紀の大発見だと思った。俺、もしかして頭がイイんじゃなかろうか。

 

で、「クソ=とてもすごい」みたいな意味だと思ったので、親方からグリダニアの名物焼き菓子が振る舞われたときに、「クソみたいに美味しい」と言ったところ、ママルカが「ブフォッ!」といきなり吹き出して、食いかけの菓子を散らかしてしまった。そのあとも引きつけを起こさんばかりの勢いで笑っていて、笑いの発作がおさまるまでかなりかかった。

 

あとでママルカに聞いたら、「クソみたいに」というと、つまり排泄物のように美味しいという意味になってしまうんだそうだ…うえっ。

自分がうっかり言ってしまった言葉の意味を理解して俺は思わず赤面し、ママルカは俺の背中を叩きながらゲラゲラ笑った。

そこは表現するなら「クソ美味い」が正しいらしい。言葉って難しいな…。

 

ママルカにいわせると、ユーモアは絶望という暗闇の中で唯一輝き続ける光なんだそうだ。

彼の表現はいつも難しくてよくわからないのだが、つまり、辛いことがあったら笑い飛ばしてしまえ!ということらしい。

 

市場の近くで手を振ってママルカと別れ、俺はポケットの中の鍵を返すために親方の家へと向かうことにした。

ちょっと遅くなってしまったから近道を通っていこう。

 

「そこの少年」

 

路地に入ったところで、背後から急に声をかけられた。

振り返ると、この界隈でよく見かける娼婦が気だるそうに壁に寄りかかっていた。

目のまわりが真っ黒で、唇は真っ赤。胸を強調するように腰の上のほうを引き絞った安っぽい綿のドレスを着ている。

艶のある赤毛を頭の上でまとめてはいるが、すでにかなりこぼれ落ちていて、長い髪の房が腰のほうまで届いていた。

 

娼婦という商売についても、もちろん俺は知らなかった。

ママルカによると、金を受け取って夜の相手をする商売らしい。

ダイラーがあの子と寝たとか、この子と寝たとか得意気に吹聴していたことがあったが、俺はてっきり枕を並べて寝ているもんだと思っていたから、本当の意味を知ったときにはかなり狼狽えた。

「オマエならきっと高く売れると思うぜ?」なんてママルカが言うので、「ええ!?」と素っ頓狂な声をあげてしまったのだが、成熟した文化圏だと、女が男を買ったり、もしくは男を好む男というのもいるらしく…ううーん。

おっと、つい余計な考え事をしてしまった。

 

「俺のこと?」

「他に誰がいるってのよ。ねえ、今日の仕事は終わったんでしょ?」

 

ニコリと笑うと、ちょっとあどけない風だった。

目のまわりをあんなに真っ黒に塗らなければいいのに。唇も真っ赤で正直怖い。

名前は…ええと…なんていったっけ…ブルたちがなにか彼女のことを話していたような気がする。

 

「喉乾いちゃったんだけど、今日は誰も奢ってくんないのよね。なにか奢ってよ」

 

喉が渇いた? …あ、そういえば。

俺はベルトに結んであった水袋を外して、彼女に放り投げた。受け取った彼女の手の中で軽く弾む。

 

「それ。今日は飲む暇がなかったから、あげるよ」

「なぁに? これ…」

 

中身を一口飲んで、彼女は途端に不味そうな顔をした。

 

「ヤギの乳。美味しいよ」

「ぷっ」

 

彼女が吹き出した。それから仰け反って大笑いする。

 

「娼婦に声かけられてヤギ乳を奢る男なんて普通いないわよ! あー、おかしい」

「そんなにおかしいのか…」

 

こういうときはどう悪態をつくんだっけ?

クソを食べなさい。いや違った。クソ食らえ、だ。

ヤギ乳をもらうために苦労してウサギ狩りまでしたのに、それを笑うとは…。

 

「女にモテたかったらスマートに酒でも奢らないとね。」

 

不味いといったくせに、ごくごくと水袋の中身を飲み干す。

空っぽになると、それをまた俺に放ってよこして、

 

「ごちそうさま! うん、案外美味しかったわ。ありがとう少年」

「どういたしまして」

「そうだ、あんた荷運び場で働いてるわよね。奢ってもらったお礼にひとつ教えてあげる」

 

いきなり近寄ってきて、息がかかるほどに顔を寄せてきた。

フワリとなにかよくわからないいい香りがする。くるくるした髪の毛が顔に触ってくすぐったかった。

 

「ブルには用心しなさい。ひとりであいつに会ったらダメよ」

「え…?どういう…」

「あいつ、ろくでもないことを考えてるみたいだから。本当に気をつけて。自分の身は自分で守りなさい」

 

手をひらひらとふって、ドレスの裾をなびかせながらマーケットのほうへ走っていってしまう。

そろそろ日も落ちる。これから彼女の営業時間がはじまるのだろう。

 

別れてからようやく思い出した。

彼女の名前はエリザベス。ブルたちからはリジーと呼ばれていた。

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